トピックス(2011年)

東北地方太平洋沖地震に関する技術セミナー

2011年7月に、2011年東北地方太平洋沖地震に関する技術セミナーを開催し、震源に関する知見をはじめ津波や強震動に関する情報を紹介しました。東北地方太平洋沖地震はその規模がM9と、予想できない大きさではありましたが、断層長さと幅の関係や平均すべり量と地震モーメントの関係、短周期レベルと地震モーメントの関係は、これまでの地震の断層パラメータの相似則の延長上に位置していることが分かりました。一方、大きなすべり量を生じた領域は津波の波源域となっていますが、それと強震動を生成した領域が対応していませんでした。現在、動力学的破壊シミュレーションなどにより、津波と強震動を統一的に説明できる断層モデルを構築する新しい方法の研究を進めています。

大連理工大学との日中学術交流会

大連理工大学の欧進萍(Jinping OU)総長より,2011年東北地方太平洋沖地震と2008年中国四川地震をふまえ、耐震工学に関する日中学術交流会の提案があり、2011年9月に当研究所より3名が大連理工大学を訪ねました。学術交流会では、「東北地方太平洋沖地震の調査結果(地震動、津波、構造物)」、「阪神・淡路大震災後の地震被害軽減に向けたプロジェクト」について報告し、大連理工大学から「四川大震災からの復興」、「都市工学における地震破壊と制御」、「重要構造物の地震時破壊挙動および損傷」について発表が行われ、充実した議論が交わされました。今後の長期的な交流を前提に、様々な共同研究の可能性についても話し合いました。

活断層巡検(青森)

2011年9月に青森県を日本海側から太平洋側へ横断する調査を行いました。青森空港近くでは津軽山地西縁断層帯をなす浪岡撓曲の丘陵が見渡せます。出来島海岸は、一昨年、鹿児島巡検で観察した2万9千年前の広域テフラ(火山噴出物)の北限分布地です。千畳敷海岸では1793年西津軽地震による隆起ベンチなどから形成された海成段丘地形を観察しました。巡検中、地質の専門家から海成段丘面形成に関わる地球規模の第四紀気候変動について学びました。下北半島では出戸断層撓曲崖から尻屋崎にて中生代ジュラ紀後期に形成された付加体の地層を観察しました。これは太平洋プレートが北米プレートに潜りこむ際にはぎとられた堆積物が陸に付加したもので、日本列島の構成に重要な地層の要素です。今後とも、フィールド調査からの知見を得て研究に役立てたいと考えています。