研究活動(2022年)

震源断層モデルの設定方法の高度化の検討

 国立研究開発法人防災科学技術研究所殿からの委託業務の一環として、地震調査研究推進本部による強震動予測手法(レシピ)で用いられている内陸地殻内地震の3ステージモデル(断層破壊様式の地震規模依存モデル、図1上)に適合する、地震モーメントと短周期レベルとの関係式(3折れ線モデル)を新たに提案し、日本地震工学会論文集(*)に掲載されました。
 この関係式と、別途検討中のアスペリティの面積比を与条件とした震源断層モデルのパラメータの設定フローを図1下に示します。これにより、第2ステージ以降ではレシピの暫定的方法を用いることなく、実現象と適合する断層パラメータを合理的に設定することが可能になります。

最大加速度の確率論的地震ハザード評価

 国立研究開発法人防災科学技術研究所殿からの委託業務の一環として、地震調査研究推進本部から公表されている2020年版の確率論的地震動予測地図の地震活動モデルを用い、今後30年間にある確率(例えば3%)で生じる工学的基盤の最大加速度の分布を試算しました(図2)。その際、地震発生確率が高い海溝型地震だけでなく、日本全国に分布する活断層による地震や、震源断層を予め特定しにくい地震など、あらゆる地震活動を考慮しています。得られた工学的基盤の最大加速度の分布図は、海外のハザードマップとの比較に必須のものであり、耐震設計のための地震荷重の設定にも有用と考えられます。

高速鉄道トンネル内分岐通過で発生する圧力波の抑制

 弊社では、高速鉄道におけるトンネル内の分岐部で発生する圧力波発生のメカニズムとその対策について研究を行ってまいりました。トンネル内の分岐部を高速列車が通過すると、圧力波が発生しトンネル内を音速で伝播して坑口から微気圧波が放出される可能性があります。こうした圧力波の発生対策としては分岐部前後を結ぶ並行トンネルの設置が効果的であり、そのメカニズムを解明し、対策効果を簡易的に評価できるようにしました。この結果、各地点の状況に応じた最適な並行トンネル長やその配置を容易に決めることが可能となりました。