研究活動(2009年)

地表の短い活断層から想定される地中の震源断層のモデル化と強震動の試算

地表では孤立した短い活断層しか認められないところでも、地中にはもっと長い震源断層が隠れている場合があります。このような断層を構造物の耐震設計でどのように扱うかが、緊急の課題となっています。
そこで、短い活断層から想定される地震による強震動を予測するために、地中の震源断層の長さや幅などの巨視的断層パラメータおよびアスペリティの面積や応力降下量などの微視的パラメータを設定する手順を構築しました。図は、横ずれの短い断層を仮定した場合の強震動予測結果の地表における最大速度分布です。
今後は、地中の震源断層の動きと地表の活断層の変位をつなぐために、浅い表層の地震時の挙動についても調べる予定です。

大規模・複雑な構造物・地盤系解析と結果の見える化

2007年7月に発生した新潟県中越沖地震は、建築の構造解析の分析にも大きなインパクトを与えました。巨大地震における構造物の挙動の解明には、地盤の材料的な強非線形性や地盤と構造物の幾何学的な非線形性、地盤の大域的な不整形性やローカルな不均質性などを考慮した、精度が高くかつ億単位の極めて大きな自由度の解析が不可欠となってきています。当研究所においても、耐震性評価に関わるお客様のこのようなご要望に応えるため、3次元有限要素法や3次元有限差分法等の高度化や、新しい解析法の開発に取り組むと同時に、大規模・複雑な対象物の挙動を直感的・視覚的に把握できるよう、画像処理技術や可視化技術にも力を入れています。

時空間統計解析に関する研究

大規模な土木構造物である「ダム」においては、遮水性・安定性などの恒久的な監視を目的として、数多くの計測が実施されており、それらを予測・評価する手法の開発は、老朽化するダムの維持管理において重要な課題となっています。既設ダムの管理対象項目である変位や水圧などの計測データの物理的な変動メカニズムを把握した上で、これまで培ってきた時間的及び空間的に変動するデータの統計的解析手法を応用した予測モデルを構築して、各種形式のダムへの適用を図っています。

高精度な放射線遮蔽解析技術

最近の高エネルギー加速器施設や原子力関連施設などの放射線遮蔽設計では、線源条件や建屋形状が複雑化しており、一般病院の放射線科のX線診療室などの設計で使われている簡易設計では、機能性を欠き、かつコスト高の設計となってしまいます。このため複雑な形状に対応可能な3次元モンテカルロ計算コードを整備し、大学や国立研究機関との共同研究を通じて実験による検証を重ねた結果、安全性及び機能性に優れた建屋設計を提供できるようになりました。図は、ある放射線がん治療施設の放射線量分布の解析結果の一例を示したもので、複雑な放射線挙動が可視化され、最適設計が可能になります。