研究活動(2019年)

断層極近傍の地震動に係る浅部断層破壊の研究

 2016年熊本地震本震において、断層極近傍では長周期地震動や永久変位が観測されました 。これらを説明するため浅部断層の破壊過程に関する研究が注目されています。
 弊社では、断層浅部の大きくゆっくりとした破壊過程が説明できる動力学的断層破壊モデルの構築を目的として、2017年より産業技術総合研究所との共同研究を行っています。その結果、ゆっくりすべりを説明するには、従来のすべり弱化則に加えて、あるすべり速度以下ですべり速度硬化となる摩擦構成則(図1)を仮定する必要があることがわかりました。

城郭石垣の調査・安定性評価

 城郭を支える基礎として古くより用いられている石垣には、文化財として価値を保ちながら、その安全性を担保することが求められています。経年変化や地震などの外力の影響で変状の生じた石垣の安定性(健全性)を合理的に評価し、修復等の必要性を判断することは、石垣を保存し、観光資源としての安全性を確保するために重要な課題です。
 石垣の調査においては、外部形状を把握するための3-D測量、内部構造を探査するためのレーダ探査(写真1,図2)、弾性波探査などの調査技術を用いて、石垣の形状変化や内部構造の状態を把握し、石垣の構造モデルを作成します。このモデルを用いた、常時および地震時安定計算や個別要素法による数値解析結果などから、安定性(健全性)を適切に評価します。
 修復が必要と判断された場合には、修復後の形状を予測したモデルを用いて、期待される健全性を把握し、さらに解体時の情報を加えた構造モデルを構築することにより、評価精度の向上が可能となります。

風力発電の普及に向けての活動

 国の再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)が施行され、促進区域も指定されるなど、今後風力発電、特に洋上風力発電は大きな伸びを示すことになると予想されます。
 先進の欧州諸国と異なり大地震や津波、台風が発生する日本では、独自の技術的課題に対応した設計手法が必要となります。
 弊社ではこれまで培ってきた地震動評価や地盤と構造物の動的相互作用解析、流体解析などの技術を活かし、研究開発や企画設計において、日本の風力発電の普及に貢献していく所存です。