研究活動(2014年)

強震動予測の最新の取り組み

1)長大な断層による内陸地震の断層パラメータの設定方法に関する研究
1995年に起った兵庫県南部地震以来、震源や地下構造に関する知見が急速に蓄積され、強震動の予測手法も格段にすすみました。また、その成果は、地震調査研究推進本部などでとりまとめられています。
一方、中央構造線などの長大な断層による内陸地震の場合、従来の方法では断層パラメータを組むのが困難で、課題となっていました。そこで、当研究所では動力学的断層破壊シミュレーションを駆使することにより、この課題の解決に取り組んでまいりました。その結果、4年前には長大な横ずれ断層による内陸地震の断層パラメータの設定方法を開発し、昨年は逆断層のパラメータの設定方法を開発いたしました。図1は、長さが400 kmの逆断層の内陸地震による計算速度波形の例です。この結果は、2008年中国四川地震の断層近くの観測記録と非常によく対応しています。


2)断層浅部で生成される地震動に関する研究
従来の強震動予測手法では、深さ数km~15 km程度の地震発生層より浅い断層浅部からは地震波の励起は少なく、無視されてきました。しかし、近年、原子力発電所から数km以内に活断層が存在することが指摘される場合があり、地震発生層よりも浅い断層面での地震波の生成の定量的評価が課題となっています。
そこで当研究所では、これまでに得られた地震学と地質学の成果に立脚して、図2に示すような動力学的断層破壊シミュレーションの結果を用いて、断層浅部で生成される地震動を定量的に評価しました。今年は、摩擦構成則の感度解析や地震記録の再現なども行って、原子力発電所の基準地震動の評価に役立てる予定です。

津波の3次元挙動解析による荷重の算定

津波の挙動をリアルに再現すると同時に、建物に作用する津波荷重(津波の力)を予測する「津波総合シミュレーションシステム」を開発・実用化しました。本システムは、津波が陸上を遡上して建物に衝突したり、建物内に浸入したりする様子を3次元で再現しながら、建物に作用する津波荷重を精度よく算定します。特に、道路など障害物のない場所に流れが集中する状況や周辺建物等による反射など複雑な挙動が再現されることから、周辺状況も反映した局所的な荷重を把握することができます。 今後は、本システムにより、市街地を遡上する津波の複雑な挙動や建造物に作用する津波荷重を明らかにするとともに、沿岸部に立地する重要構造物の津波に対する構造安全性の検討や津波対策の立案などを通して、津波防災に活用してまいります。