研究活動(2016年)

長大低角逆断層を対象とした動力学的断層解析

2013年度より、M9クラス以上の巨大なプレート境界地震の断層パラメータ設定手法の確立を目指し、動力学的断層破壊シミュレーションにより円形クラックの式に代わる応力降下量算定式を求める研究を行っています。具体的には、仮定した平均動的応力降下量 Ds # の算定式 Ds # =c[ M0/LW 2 ]M 0 は地震モーメント、LW は断層長さと幅)における応力形状係数 c を求めるものです。
断層モデルは低角逆断層で L =200km~2000kmの断層長さを設定しました(図1)。
シミュレーションの結果、図2の赤線に示す応力形状係数の近似式が得られました。今後は、東北地方太平洋沖地震を対象に断層パラメータ設定手法の検証を行う予定です。

内陸地震の強震動予測手法の体系化に関する研究 -熊本地震を受けて-

弊社では、動力学的断層破壊シミュレーションを駆使することにより、断層パラメータ設定手法を含む強震動予測手法の高度化・体系化に継続的に取り組んでいます。このうち内陸地震に関する手法の体系化は完了し、現在、観測記録による検証をすすめています。
2016年の4月に起った熊本地震は、図3に示すように、地表に現れた断層の長さが34kmのわりには地震モーメントが大きかったという主張と、地中の震源断層長さ42~60kmを考慮すれば相応の地震モーメントだったとの主張があります。図に実線で示した弊社で求めた式(壇・他,2011)は熊本地震の地表断層長さとの対応がよく、今年は、弊社の手法で熊本地震の観測記録が説明できるかどうかを検討する予定です。

ダム提体の耐震健全性評価

近年の大規模地震の発生を受けて、従来の想定を上回る地震動に対する構造物の耐震性評価が課題となっており、耐震性に優れた重力式コンクリートダム等においても大規地震の影響評価が求められています。弊社では、ダムサイトにおいて想定される最大規模の地震動を検討用地震動として用いて、図4に示す解析モデルを用いたダムの3次元FEM動的応答解析を実施し、ダム提体や水門柱などの付帯構造物の健全性評価を行っております。耐震補強が必要な判定結果となった場合には、耐震補強方法を想定し、それを考慮した解析モデルについての検討を行うことにより、ダムの耐震性向上に寄与しております。