研究活動(2010年)

構造物と地盤の動的相互作用解析の研究

地盤と構造物の動的相互作用に関する解析的な研究分野では、1990年代の半ば頃までに2次元・軸対称・3次元の有限要素法や境界要素法或いはそれらを組み合わせたハイブリッド法等による数値解析プログラムを精力的に開発してまいりました。その後も、コンピュータ環境の変化に対応した機能拡張を行っております。それらのプログラムは構造物の動的相互作用解析のみならず環境地盤振動等、他分野の解析へも応用しています。しかしながら、地中の観測点で1G近い最大加速度が観測された2007年7月の新潟県中越沖地震以降は、構造物周辺の地盤材料の非線形性や構造物と周囲の地盤との剥離・滑り等の幾何学的な非線形性を考慮した3次元解析や地盤構造の不整形性や地盤物性の不均質性を考慮した解析の要請が強くなって参りました。これらの要請に応えるべく地盤の非線形性・不整形性・不均質性を取り入れた解析を実施しています。さらには、従来型の有限要素法とは異なったコンセプトの大規模な有限要素解析手法によるプログラムの開発も引き続き行っております。

強震動予測のための動力学的断層破壊モデルの構築

現在の強震動予測では、活断層の長さと地震発生層の厚さを与条件として、地中における震源断層の断層モデルを設定していますが、地震発生層より浅い部分は考慮されていません。そこで、地中の震源断層と地表の断層を物理的に関係づけたモデルを、動力学的断層破壊モデルで構築しました。図は、構築した断層モデルの動力学的破壊シミュレーション結果のすべり速度時間関数と最大すべり速度の分布です。これらの動力学的断層破壊モデルの知見を取り込んで、現在の強震動予測で設定している断層モデルを従来よりもさらに物理的に整合するモデルに改良し、実務に適用できるようにしていきます。

太陽電池パネル群に対する数値流体解析を用いた耐風設計

近年、環境負荷低減のため自然エネルギーに注目が集まっており、日本国内においても大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設が進められています。太陽電池アレイのように軽量な構造物では風荷重が主要な荷重となるため、風荷重の評価が構造物の健全性評価や建設コストに大きな影響を与えます。風洞実験では風洞設備や模型縮尺率などの制限により精緻な評価が困難でしたが、数値流体解析を用いることでアレイ毎の風圧係数分布など、より詳細な検討が可能となりました。