研究活動(2007年)

強震動予測のための震源断層の動力学的破壊モデルの構築

これまで、地表で観察される地震断層は地質学者を中心に、地震波を放出する地中の震源断層は地震学者を中心に研究が進められてきました。そのため、地表地震断層は、地中震源断層の結果であるにもかかわらず、両者は、切り離して考えられてきました。

そこで、地表地震断層の特徴を表す断層長さと最大すべり量との経験的関係が、地中震源断層の特徴を表す断層面積と平均すべり量との経験的関係と物理的につながるように、動力学的破壊モデルを構築しました。図は、構築した断層モデルの動力学的破壊シミュレーション結果の最終すべり分布です。

今後は、地表地震断層が数kmと短い場合や100 kmと長い場合について、さらに研究を行う予定です。

地盤増幅度の簡易評価手法の開発

地震ハザード評価などで用いられる簡便な地震動予測では、地盤増幅度が重要な要素として認識されています。また、近年の大地震の観測記録からは、地盤の非線形化の影響が多く報告されています。このような観測記録の分析から、地盤の非線形性を考慮できる増幅度の評価手法を新たに開発しました。必要な地盤情報としては、表層20mの平均S波速度だけであり、入力地震動レベルに依存した増幅度が簡易に評価できます。この評価手法による増幅度により、簡便な地震動予測の高精度化が期待できます。

地盤液状化による側方流動の挙動

液状化に伴う側方流動が構造物に及ぼす影響を三次元有効応力解析を用いて解析しました。
その一例として、ケーソン護岸背後に建つ群杭支持された水素スタンドの挙動を示しています。液状化地盤が杭間をある程度すり抜けながら、海側に大きく変形し、その影響で杭も海側と陸側で複雑なモーメント分布となっています。

またパラメトリックスタディーの結果、設計上最も有利になるのは、杭頭を半剛接にする場合であることを見出しました。さらに従来はあまり問題とされなかった粘性土地盤においても、地震後半年程度経過してある程度残留変形が生じることが分かりました。

火山防災地図システムの開発

企業における事業継続プラン(BCP)策定の動きが進んでおり、地震だけでなく火山災害に関しても検討を進めています。危険度が高いと思われる火山の噴火特性、災害履歴等のデータベース整備、降灰、火山ガスの拡散シミュレーションによる災害 範囲予測を行っています。また、これらの情報を他の災害データベースとともに地図システムへ搭載し、お客様のBCP策定に幅広い情報を提供します。さらに、過去の噴火事例との検証により降灰シミュレーション技術を確立し、噴火が予測されたときに事前に降灰情報を提供することを目指しています。