研究活動(2013年)

動力学的断層解析による長大断層の検討

2009年度より、当研究所では内陸地殻内地震の長大断層パラメータの設定手法の確立を目指し、円形クラックの式に代わる応力降下量算定式を、動力学的断層破壊シミュレーションにより求める研究を行っております。 具体的には Ds #=c[M0/LWmax2]Ds # は平均動的応力降下量、M0 は地震モーメント、LWmax は断層の長さと幅)における応力形状係数c を、動力学的なアプローチから求めるものです。鉛直横ずれ長大断層を対象とした検討はほぼ完成し、現在、傾斜60度の逆断層を対象とした検討をすすめております。断層モデルは長さ15~300 kmの8ケースを設定し、断層左上端に動的応力降下量を有するアスペリティを置きました(図1)。検討の結果、図2の赤色線に示す断層のアスペクト比と応力形状係数の関係式が得られました。今後、当式を基に内陸逆断層の断層パラメータ関係式を求める予定です。

長周期地震動作成手法の改良と南海トラフ沿いの巨大海溝型地震の地震動予測

2008年度より、国土交通省の建築基準整備促進事業にて、地震観測記録に基づく長周期地震動作成法を検討しております。この手法は、国土交通省「超高層建築物等における長周期地震動への対策試案について」という意見募集の中でも用いられております。東北地方太平洋沖地震発生後、この地震やその余震等の記録を含めて手法の改良を行ない、南海トラフ沿いの巨大海溝型地震の長周期地震動予測を実施しました。また、公開されている地下構造モデルを介して、長周期地震動を計算する予測式も作成し、任意地点での予測ができるようにしました。図3には、継続時間の長さを表すひとつの指標である群遅延時間の標準偏差のサイト特性分布を示します。堆積層が厚く、地盤の固有周期の長い、関東平野の中心部で継続時間が長くなる特徴を計算波に反映することができます。
(本研究の一部は2013年度日本地震工学会論文賞を受賞いたしました。)

高速鉄道トンネル内圧縮波の伝播予測

当研究所では、高速鉄道におけるトンネル圧縮波の伝播解析モデルの研究を行ってまいりました。高速鉄道がトンネルに突入すると、トンネル内部に圧縮波が発生し、反対側のトンネル坑口から放射され、ドーン音が発生することが以前から知られていました。数kmを超えるような長いトンネルから放射される音の大きさは、圧縮波の波面が切り立っていく非線形効果に加えて、トンネル壁面から受ける摩擦の効果の累積で決まるため、数値シミュレーションによる伝播解析で予測を行う必要があります。新たに得られた伝播解析モデルにより、高速鉄道トンネルで実測された伝播過程や圧縮波の波形を精度良く再現することが可能となりました(図4、図5)。今後は、この伝播解析モデルを用いて、長大トンネルから放射される音の低減対策に役立てていく予定です。