研究活動(2018年)

強震動予測のための長大断層のパラメータ設定方法の検証

弊社では、動力学的断層破壊シミュレーションに基づき、2011年に長大な横ずれ断層のパラメータ設定方法を、2015年に長大な逆断層のパラメータ設定方法を提案し、 同時に、いくつかの地震の観測記録を用いて設定方法の検証結果も示しました。
2018年は、1999年トルコKocaeli地震(横ずれ断層、断層長さ141km)と2008年中国Wenchuan地震(逆断層、断層長さ279km)の観測記録を用いて、パラメータ設定方法の再検証を行いました。
次ページに示す図は、トルコKocaeli地震の断層近くの計算速度波形(上段)と観測速度波形(下段)を比較したものです。図より、観測されたパルス状の速度波形が、計算でもほぼ再現できていることがわかり、 提案したパラメータ設定方法の妥当性を示すことができました。

南海トラフの地震に対する設計用入力地震動

愛知県設計用入力地震動研究協議会からの委託業務で、南海トラフの地震による東海地域の設計用入力地震動を作成しました。
1707年宝永地震を想定地震とし、壇・他(2013) によるプレート境界地震の強震動予測のための断層パラメータ設定方法に基づき、断層面積を与条件としたアスペリティモデルを設定しました。 地震動のばらつきを考慮して、短周期レベルを経験式の平均値の1倍・1.25倍・1.5倍とした3ケースを設定し、要素地震として5つの観測記録を用いた経験的グリーン関数法により 東海地域の10地点程度の地震動を作成しました。その結果、平均値の1倍と1.25倍として得られた地震動が、過去の地震における震度分布と比較して調和的であることを確認しました。

第11回米国地震工学会(NCEE)大会にて発表

2018年6月、ロサンゼルスで行われた米国地震工学会(NCEE)大会にて、世界のスラブ内地震の断層パラメータの分析に関する研究成果を発表しました。
地震本部(2016)によるスラブ内地震の強震動予測レシピは、日本のスラブ内地震のデータのみで得られた相似則 (笹谷・他, 2006)に基づいています。本研究では、その相似則の海外のスラブ内地震への適用性について調べてみました。その結果、海外のスラブ内地震の地震モーメント M 0 と短周期レベル A との関係は、日本のスラブ内地震の相似則とよく整合していることが分かりました。
ポスター発表では、海外の研究者と充実した議論を交わすことができ、研究を進めるにあたっての貴重な示唆を得て見識を深めることができました。